六韜 第13章

文啓第十三

この章のポイント(3行サマリー)

  • 最高のリーダーシップとは、何もしていないように見えることである。
  • リーダーが自らの力を誇示せず、静かに構えることで、組織は自然と良い方向に導かれる。
  • 人々は、流れる水のようなもの。
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古典原文(書き下し文)

古典に興味のある方向け

重要キーワード解説

📜 聖人此を守りて萬物化す

優れたリーダーは、自然の摂理や根本原理を守るだけで、組織や人々は自ずと良い方向に変化していくということ。

📜 天下が大きく定まり

天下が大きく定まり、人々がそれぞれの場所で満足し、リーダーを敬愛している、理想的な状態。

📜 人々の心や集団の動きは

人々の心や集団の動きは、流れる水のように、自然で止めがたい力を持つという比喩。無理に制御しようとせず、うまく導くことの重要性を示す。

現代語訳

文王が太公望に尋ねた。「聖人は何を守るのですか。」太公望は答えた。

...(省略)
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現代に活かすための「原理原則」

「無為の経営術」(自然な流れに任せる)

太公望は「天地は自ら明らかにしない」と述べた。これは最高のリーダーシップは目立たないものであることを示している。優れた組織運営では、リーダーが前面に出て指示を出すのではなく、システムや環境を整えることで、メンバーが自然に正しい行動を選択できるようにする。マイクロマネジメントからの脱却である。

「水の法則」(人の本質的な動き)

「天下の人々は流れる水のようです」という比喩は、人間の行動原理を的確に表している。水は障害物があると止まり、道があると流れ、静かにすると清くなる。組織においても、過度な制約は活力を削ぎ、適切な方向性を示せば人々は自然に動き、安定した環境では個人の能力が十分に発揮される。

「循環の思想」(終わりて復た始る)

すべての物事は循環するという認識は、現代のサステナビリティ思考と合致する。問題が解決しても再び新たな課題が生まれ、成功しても次の挑戦が待っている。この循環を理解し、一つの成果に満足せず、常に次の段階を見据えることが重要である。

「大定の状態」(理想的な組織状態)

太公望の説く「大定」とは、各構成員がそれぞれの役割に満足し、全体として調和が保たれている状態である。現代組織においても、個人の自己実現と全体の目標達成が両立した状態が理想的であり、これは従業員エンゲージメントの概念と一致する。

現代への問いかけ

1. あなたはリーダーとして、自分の存在を誇示するのではなく、メンバーが自然に良い選択をするような環境づくりに注力していますか?

2. 組織やチームの問題に対して、力で押し通そうとするのではなく、「水の法則」に従って柔軟に対応していますか?

3. 一つの成果に満足して止まるのではなく、物事の循環性を理解し、次の段階の準備をしていますか?

4. あなたの組織では、個人の満足と全体の調和が両立する「大定」の状態を実現できていますか?

5. メンバーの内発的な動機を重視し、外から与えられるのではなく自ら富む(成長する)環境を提供していますか?

【応用編】この「文啓第十三」の教えを、現代でどう活かすか?

この章で学んだ知恵は、現代の様々な場面で応用できます。興味のある分野の記事を読んで、具体的な活用法を学びましょう。