三十五章:軍略第三十五
この章のポイント(3行サマリー)
- 困難な地形や悪天候に対する準備の重要性について説く。
- あらゆる状況に対応できる特殊装備と兵士の習熟の必要性を論じ、事前準備が心配を取り除き、確実な実行を可能にすることを示した危機管理の基本原理である。
古典原文(書き下し文)
古典に興味のある方向け
重要キーワード解説
📜 軍略
軍事的な計略と準備。あらゆる状況を想定した包括的な準備計画
📜 困難な状況に備えて
困難な状況に備えて、必要な装備と技能を事前に整えること
📜 特定の困難な状況に特化した専用の道具や技術
特定の困難な状況に特化した専用の道具や技術
📜 装備や技術を確実に使いこなせるまで反復練習すること
装備や技術を確実に使いこなせるまで反復練習すること
📜 予期しない困難に対しても対応できる準備と能力
予期しない困難に対しても対応できる準備と能力
現代語訳
武王が太公望に尋ねた。「軍を率いて深く諸侯の領地に入り、深い谷や険しい水場に遭遇した。我が三軍がまだ完全に渡ることができないのに、激しい雨が降り、大水が押し寄せ、前後の連絡が取れず、舟や橋の準備もなく、また水草の備蓄もない。
現代に活かすための「原理原則」
「事前準備の重要性」(危機管理の基本原理)
太公望の教えは、現代の危機管理やリスク管理の基本原理を表している。困難な状況に遭遇してから対策を考えるのではなく、事前にあらゆる状況を想定し、それに対応できる装備と技能を準備しておくことが重要である。現代のビジネスにおいても、市場の変化、技術革新、自然災害など、予期しない困難に対する事前準備が組織の生存と成功を左右する。
「専門技能の習熟」(ツールマスタリーの原則)
「器械が不便で、教習が不熟であれば、敵と遭遇しても勝つことはできない」という教えは、現代のスキル開発やツールマスタリーの重要性を示している。高度な技術や複雑なシステムを導入しても、それを使いこなす技能が伴わなければ、実戦では役に立たない。継続的な学習と訓練による技能の習熟が、競争優位の源泉となる。
「想定外への対応力」(レジリエンスの構築)
深い谷や大水といった予期しない困難に遭遇した時の対応について論じることで、組織のレジリエンス(回復力)の重要性を示している。完璧な計画は存在しないが、様々な状況に対応できる準備と能力を持つことで、想定外の事態にも対処できる。現代でも、変化の激しい環境での適応力と回復力が組織の持続可能性を決定する。
「装備の多様性」(リソースの多面的準備)
舟や橋の準備、水草の備蓄など、状況に応じた多様な装備の必要性を説いている。これは現代の経営資源管理における多面的な準備の重要性と合致する。財務的リソース、人的資源、技術的資源、情報資源など、様々な角度からの準備が、困難な状況での選択肢を増やし、成功確率を高める。
「心理的準備」(メンタルレジリエンスの強化)
「三軍は恐怖し、将兵は顔色を失っている」という状況を通じて、困難な状況での心理的な準備の重要性も示している。技術的な準備だけでなく、メンタル面での準備も不可欠である。現代の組織においても、変化や困難に対する心理的な準備と、それを支える組織文化の構築が重要となる。