発啓第十二
この章のポイント（3行サマリー）
- 事を起こすには、タイミングが全てである。
- 天（外的要因）と人（内的要因）に、変化の兆候が現れるのを待つ。
- そして、行動を起こす際には、決して私利私欲であってはならない。
古典原文（書き下し文）
古典に興味のある方向け
重要キーワード解説
📜 天殃人災（てんおうじんさい）
天の災いと、人の災い。事を起こすべき、客観的な状況と、内部的な機運の両方が熟した状態を指す。
📜 完全な勝利とは
完全な勝利とは、物理的に相手を打ち負かすことではなく、戦う前に勝敗が決している状態。人心の掌握と、大義名分が重要となる。
📜 世界や市場は
世界や市場は、特定の一人のものではなく、そこに関わる全ての人々のものであるという思想。利益を独占せず、共有することの重要性を説く。
現代語訳
文王が豊の地にいるとき、太公望を召して言った。「ああ、商王の虐政は極まり、罪のない者を殺している。公よ、私を助けて民の憂いを除くにはどうすればよいか。
現代に活かすための「原理原則」
「大義の時間軸」（天の時を待つ）
すべての大きな変化や成功には、その時期というものがある。太公望は「天の災いと人の災い」という表現で、客観的な状況と主観的な機運の両方が熟するのを待つことの重要性を説いた。これは現代においても、新事業の立ち上げや組織変革において、市場環境とチーム内部の準備状況を見極めることに通じる。
「陰陽の分析力」（多面的な観察）
太公望は「陽と陰」「外と内」「疎と親」という三つの視点での分析を推奨した。これは現代のビジネス分析における360度評価や多角的な市場分析と同じ発想である。一つの側面だけでなく、相反する要素や隠れた要素も含めて総合的に判断することで、より正確な戦略立案が可能となる。
「利益共有の原理」（天下の天下）
「天下は一人の天下ではなく、天下の天下」という言葉は、現代のステークホルダー資本主義の原理を先取りしている。独占を目指すのではなく、関係者全体の利益を考慮することで、より大きな成功と持続可能性を手に入れることができる。
「無為の力」（見えない影響力）
「大いなる知恵は知恵と見えず」という教えは、最も効果的なリーダーシップは目立たないものであることを示している。過度な自己アピールや直接的な指示よりも、環境を整え、人々が自然に良い選択をするよう導くことの方が、長期的には大きな成果を生む。