王翼第十八
この章のポイント(3行サマリー)
- 偉大なリーダーは、決して一人で全てを成し遂げようとはしない。
- 自らの「翼」となる、多様な専門家集団を組織する。
- 戦略家、分析家、技術者、広報担当…。
古典原文(書き下し文)
古典に興味のある方向け
重要キーワード解説
📜 王翼(おうよく)
王者の翼。リーダーを支え、その能力を拡張する、多様な専門家や側近たちのこと。
📜 リーダーを支える専門家の総数
リーダーを支える専門家の総数。具体的な数ではなく、組織の成功には、非常に多くの多様な才能が必要であることの象徴。
📜 それぞれの能力や専門性に応じて
それぞれの能力や専門性に応じて、最適な役職や任務を与えること。適材適所の原則。
現代語訳
武王が太公望に尋ねた。「王者が軍を率いるには、必ず股肱や羽翼となる者がいて、威光や神威を成し遂げるというが、どうすればよいか。」太公望は答えた。
現代に活かすための「原理原則」
「機能別組織の設計」(専門性による分業)
太公望が示した七十二人の専門家集団は、現代の機能別組織構造の原型である。戦略立案(謀士)、情報収集(耳目)、広報・PR(羽翼)、財務管理(法算)、人材育成(奮威)など、各部門の専門性を活かした組織運営が大規模プロジェクトの成功には不可欠である。
「適材適所の人事戦略」(能に因りて職を受く)
「能力に応じて職務を与え、それぞれの長所を取る」という原則は、現代の人材マネジメントの基本である。個人の強みを最大化し、弱みを補完する組織設計により、全体のパフォーマンスを向上させる。画一的な人事制度ではなく、個別最適化された役割分担が重要となる。
「情報システムの構築」(多角的情報収集)
天文(市場環境)、地利(地理的要因)、耳目(競合情報)、遊士(内部情報)など、様々な角度からの情報収集体制が整備されている。現代のビジネスにおいても、マーケティングリサーチ、競合分析、顧客インサイト、内部監査など、多面的な情報収集が戦略立案の基盤となる。
「リスク管理の体系化」(予防と対応の両輪)
方士(医療・健康管理)、股肱(防御・インフラ)、通材(問題解決)など、様々なリスクに対する専門的な対応体制が用意されている。これは現代の包括的リスク管理(ERM)の考え方と一致し、予防措置と緊急対応の両方を組織的に準備することの重要性を示している。
「柔軟な組織運営」(時に随って変化)
「時に随って変化させ、これを綱紀とする」という教えは、現代のアジャイル組織運営の先駆けである。固定的な組織構造にこだわらず、状況に応じて柔軟に役割や体制を変更し、最適な対応を取る能力が組織の競争力を決定する。