将威第二十二
この章のポイント(3行サマリー)
- リーダーの威厳は、どこから生まれるのか。
- それは、影響力の大きい人物(貴大)の過ちを、断固として罰する厳格さ。
- そして、組織の末端で働く、目立たない人物(貴小)の善行を、見逃さず賞賛する公平さ。
古典原文(書き下し文)
古典に興味のある方向け
重要キーワード解説
📜 将威(しょうい)
将軍の威厳。組織のリーダーが持つべき、人々を従わせ、組織を引き締める力。
📜 地位の高い者や
地位の高い者や、影響力の大きい者であっても、罪を犯せば厳しく罰すること。
📜 身分の低い者や
身分の低い者や、目立たない者であっても、功績があれば正当に評価し、賞を与えること。
現代語訳
武王が尋ねた。「将軍は何をもって威厳とし、何をもって明察とし、何をもって禁止して命令を行き渡らせるのか。」太公望は答えた。
現代に活かすための「原理原則」
将威篇の核心は、真のリーダーシップが社会的地位に関係なく公正であることにあります。現代の組織運営において、権力者への忖度や身分による差別を排除し、純粋に行動の質に基づいた評価システムを確立することが、組織の信頼と規律の基盤となります。
「逆転の信賞必罰」(権力者への厳罰・一般従業員への厚遇):通常のヒエラルキーを逆転させ、権力者の不正には厳罰を、一般従業員の努力には手厚い賞賛を与えることで、組織全体の倫理観を高めます。現代では、経営陣の不正を隠蔽せず、現場スタッフの貢献を積極的に評価する組織が、長期的な信頼を獲得します。
「見せしめの効果」(戦略的な処罰と表彰):一人の処罰が全体を引き締め、一人の表彰が全体を鼓舞するよう、戦略的に対象を選択します。現代では、影響力の大きい管理職の不正処分や、現場の優秀な従業員の大幅昇進などが、組織文化の変革に大きな効果をもたらします。
「上下通達の公平性」(全階層への一貫性):組織の上から下まで、一貫した価値基準で評価し、地位や権力に左右されない公正な組織運営を行います。現代では、CEO から新人まで同じ行動規範を適用し、違反者には地位に関係なく同等の処分を下すことが重要です。
「威厳の源泉」(恐怖ではなく尊敬による権威):恐怖による威圧ではなく、公正さと一貫性による尊敬に基づいた権威を確立します。現代のリーダーには、えこひいきや忖度を排除し、透明で公平な意思決定による信頼獲得が求められます。
現代では、コンプライアンス管理、人事評価制度、組織改革、危機管理などに直接応用できる組織統治の基本原則です。