十三章：用間篇
この章のポイント（3行サマリー）
- 情報こそが競争の勝敗を分ける最重要要素であり、その獲得に投資を惜しむべきではない。
- 情報源には五つのタイプがあり、それらを巧みに活用することが、卓越した戦略となる。
- 特に、競合の情報を逆手に取る「反間」は極めて重要であり、最大限の配慮が必要である。
古典原文（書き下し文）
古典に興味のある方向け
重要キーワード解説
📜 用間（ようかん）
スパイ・諜報活動の総称。情報戦における最重要戦略として、多大な投資に値する活動
📜 因間・内間・反間・死間・生間の五種類の諜報員
因間・内間・反間・死間・生間の五種類の諜報員。それぞれ異なる役割と手法を持つ情報収集体系
📜 五種類のスパイを同時に活用しながら
五種類のスパイを同時に活用しながら、その存在を秘匿する神業的な諜報統制技術
現代語訳
孫子は言う。およそ、十万の軍隊を起こし、千里の彼方へ出征すれば、民衆の費用、国家の経費は、一日に千金を費やし、内外は騒然とし、道路は疲れ果て、仕事が手につかない者は、七十万家にのぼり、数年間、対峙して、一日の勝利を争う。
しかし、爵位や俸禄、百金を惜しんで、敵情を知らない者は、この上なく、不仁である。
現代に活かすための「原理原則」
用間篇の核心は、情報の戦略的価値と、信頼関係構築に基づくネットワーク活用の重要性にあります。現代のビジネスや人生において、正確な情報収集と人的ネットワークの構築が、あらゆる成功の前提条件となっています。
「五間の活用」（情報ネットワークの構築）：郷間（現地情報）、内間（内部情報）、反間（双重スパイ）、死間（偏向情報）、生間（直接確認）の五つの情報収集ルートを組み合わせ、多角的で信頼性の高い情報ネットワークを構築します。現代では、顧客フィードバック、社内情報、競合情報、市場調査、直接交渉などに応用できます。
「信頼関係の最重要性」（人間関係への投資）：スパイより親しい者はなく、スパイより厚い報酬はなく、スパイより秘密なことはないというように、情報提供者との信頼関係構築に最大の投資をします。現代では、メンター、アドバイザー、業界エキスパート、社内キーパーソンなどとの関係構築がこれに相当します。
「反間の活用」（情報の逆利用）：敵のスパイを逆に利用し、自分に有利な情報を流したり、敵の誤判を誘発したりする高度な技術です。ビジネスでは、競合情報の流出を逆に利用し、競合他社の戦略を誤った方向に導くことに応用できます。
「情報セキュリティの重要性」（機密管理）：スパイ活動が発覚すれば関係者全員の立場が危うくなるように、情報の漏洩は致命的なダメージをもたらします。現代では、機密情報の管理、コンプライアンスの徹底、信頼できる人物の見極めが不可欠です。
「最高の知恵の活用」（エリート人材の登用）：情報戦に勝つためには、最高の知恵を持つ人材を登用し、必ず大功を成し遺げることが重要です。現代では、業界のトップエキスパート、最新技術の専門家、市場のキーパーソンなどとのネットワークが組織の見識と能力を大幅に向上させます。